【白石たづ子】
2018年度介護保険制度改正があり、今回の改正案では、市町村の権限強化として、財政的インセンティブが新たに導入されるといわれています。これは、自立支援や介護予防などで成果を上げている市町村や、それを支援する都道府県を評価し、国からの交付金を増額するというものです。具体的には、国から提供されたデータを分析した上で、計画を策定するとともに「介護予防・重度化防止等の目標を設定し、その達成状況に応じて、市町村と都道府県に国が財政的インセンティブ(交付金)を増額する仕組みです
国は要介護度を改善した自治体に実績などに応じた交付金を出すなどインセンティブを用意し、市町村の保険者の機能強化を図ることを予定しています。介護サービスにかかる費用を抑制するためには、要介護状態にならないよう介護予防に力を入れる必要があります。
そこで、ソーシャルインパクトボンドの活用について本市のご見解をお伺いします。
「ソーシャルインパクトボンド=Social Impact Bond(SIB)」とは2010年にイギリスで始まった民間資金を活用した官民連携による社会課題解決の仕組みであります。経済産業省の平成27年度健康寿命延伸産業創出推進事業の中で、成果報酬型ソーシャルインパクトボンド構築推進事業が採択されるなど、国もその動向に注目しております。
SIBは、医療や介護のように、将来にかかる行政コストを削減するといったケースに適していると言われています。社会的課題を解決するにあたり、行政がサービス提供者に実施を依頼し、その結果改善、達成された社会的成果に対し、行政機関が対価を支払うことをコミットする官民連携手法の一種であります。
SIBは世界に広がっており、少子高齢化により財政が年々厳しくなる日本の自治体においても、活用できると期待が高まっています。実証事業は 6件あり、認知症対策としては、福岡市、天理市でも実施を予定されております「くもんプログラム 」があります。介護保険料削減をターゲットとし、要介護度がどう違ったかをはかり、削減効果が立証されれば、削減できた分のインセンティブを企業に渡すというものです。
SIB組成の意義は、本来行政機関の実施するサービスのみで十分に社会的課題解決に対して成果の出ていない領域に対して、成果に一定のエビデンスを有する民間事業者と連携することにより、行政機関が資金的リスクを負わずに解決することにあります。目標達成・未達いずれの場合にも、対象事業における成果指標の明確化や、事業成果の可視化が図られるといった点でSIB実施の意義があると考えられています。
【質問1】
本市でSIB(ソーシャルインパクトボンド)を活用した場合の効果と利点、懸念事項についての見解ををお伺いします。
【市長答弁1】
ソーシャルインパクトボンドについては、民間の手法やノウハウ、資金などを活用した官民連携による地域課題の解決と行政コストの削減を目指す手法のひとつとして注目されている。私としても、「市民・企業などの外部の力を最大限に活用して、コスト削減を図りながら市民サービスの向上を図る」という本市の行政改革の基本方針に合致したもので、行政と市民、民間事業者が協働して地域社会の課題解決に取組む効果的な手法として関心を持っているところです。
議員から自立支援や介護予防の事業にこのシステムを活用してはとのご提案をいただきました。平成27年度に大都市を中心とした7氏において、ソーシャルインパクトボンドによる認知症予防の実証事業が実施されましたが、その分析結果では介護に要する時間の短縮など、要介護にして「1」に近い経度化の効果が確認され、得られた効果を便益(金銭的価値)に換算すると一人当たり年平均20万円近い介護保険サービス利用額の節減効果があったことが示されています。本市でも同様の効果が得られるのではないかと期待するところです。
ただ、ソーシャルインパクトボンドを活用する場合にはソーシャルインパクトボンド事業の本格的な導入事例が少なく、情報量が不足していることから不確定要素も多く、制度設計や実施主体となる事業者、出資者の確保、成果指標の立て方や成果指標を評価する仕組みなど多くの課題があるものと考えています。今後国の動向や他市の成功例なども見定め、その導入について研究して参ります。