自治体における責任と可能性
子どもの「遊び場」は、単なる空き地や公園のことではありません。そこは、子どもが自分の身体を使い、他者と関わり、失敗し、学び、成長していく大切な空間です。
国際的には、国際連合が採択した児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)第31条で、子どもには「休息・余暇・遊び」の権利があると明記されています。日本も締約国です。つまり、遊びは「与えられればよいもの」ではなく、「保障されるべき権利」なのです。
第31条
1 締約国は、休息及び余暇についての児童の権利並びに児童がその年齢に適した遊び及びレクリエーションの活動を行い並びに文化的な生活及び芸術に自由に参加する権利を認める。
2 締約国は、児童が文化的及び芸術的な生活に十分に参加する権利を尊重しかつ促進するものとし、文化的及び芸術的な活動並びにレクリエーション及び余暇の活動のための適当かつ平等な機会の提供を奨励する
では、自治体においてこの権利はどのように位置づけられているでしょうか。
多くの自治体では、公園整備や放課後児童クラブの拡充などに取り組んでいます。しかし現実には、ボール遊び禁止、時間制限、騒音苦情、管理優先の設計など、子どもが思いきり遊べる環境は減少傾向にあります。安全配慮や近隣との調整は当然必要です。しかし、それが過度になれば、子どもの「挑戦する機会」まで奪ってしまいかねません。
一方で、先進的な取り組みもあります。たとえば東京都の世田谷区では、子どもが主体的に遊べるプレーパーク活動を支援しています。そこでは大人は管理者ではなく、見守る存在です。多少の擦り傷や泥だらけを前提に、「自己決定」と「責任」を学ぶ空間が確保されています。
自治体の役割は三つあると考えます。
第一に、「場所の確保」。量の問題です。徒歩圏に自由に過ごせる空間があるかどうかは、子どもの日常を大きく左右します。
第二に、「質の保障」。禁止事項を増やすことではなく、どうすれば安全と自由を両立できるかを設計段階から考えることです。
第三に、「子どもの声を聴くこと」。子どもは未成熟だから判断できない、と一律に扱うのではなく、年齢や経験に応じて意見を反映させる仕組みを整えることが大切です。これは条約にも示されている「意見表明権」の具体化でもあります。
少子化が進むなかで、「子育て支援」という言葉はよく使われます。しかし、経済的支援だけでなく、「遊べるまち」であることもまた、重要な子育て政策ではないでしょうか。
遊び場は、未来の市民を育てる土壌です。
整然と管理された空間よりも、少しだけ余白のあるまち。
失敗を許す文化のある地域。
自治体が本気で子どもの権利を考えるとき、遊び場政策はその象徴になるはずです
