小学校給食の無償化と課題

いま日本でどうなっている?

自治体独自の無償化
• 2023年9月時点で、小中学校の給食費を「全員無償」にしている自治体は547/1794自治体(約3割)。
• 部分無償(第3子以降、低所得世帯のみなど)も含めると、自治体の約4割が何らかの形で無償化を実施。
• コロナ禍以降、「子育て支援」「物価高騰対策」として一気に広がりました。

国レベルの動き
• 自民・公明・維新の3党合意などを踏まえ、2026年度以降、まずは公立小学校から給食費無償化を全国で進める方針が示されています(制度設計の詳細は検討中)。
• 一方で、文部科学省は「給食無償化に関する課題の整理」という資料を出し、メリットだけでなく公平性・財源・国と地方の役割分担などの問題点も列挙しています

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小学校給食の無償化は、子どもの成長を社会全体で支える象徴的な施策として、全国各地で広がりつつある。物価高騰や賃金の伸び悩みの中で、保護者の家計負担を軽減し、子育て世帯を応援する具体的な支援策として期待されている。

 第一に、給食無償化は家庭の経済的負担を直接的に減らす効果が大きい。給食費は月数千円、年間では数万円に及ぶ。子どもの数が多い世帯やひとり親世帯にとっては、その負担感は決して小さくない。無償化により、教育・習い事・医療費など、他の子育て費用に回せる余力が生まれる。

 第二に、給食費の未納問題の解消につながる点も重要である。これまで、学校現場では担任や事務職員が督促にあたり、心理的な負担を抱えてきた。無償化によって「払える/払えない」で悩む必要がなくなり、教職員は本来の教育活動に一層専念できる。また、経済状況により給食をためらう、弁当を持参できず肩身の狭い思いをするなど、子どもが感じる見えない格差や心の負担を軽減することにもつながる。

 第三に、栄養バランスのとれた食事をすべての子どもに保障できる意義は大きい。家庭の事情に左右されず、誰もが同じ内容の給食を受けられることは、健康面だけでなく「みんなと同じものを食べる」安心感や、食育の観点からも価値がある。給食は単なる昼食ではなく、地元食材を学ぶ機会や、望ましい食習慣を身につける場でもある。

 一方で、課題も無視できない。最大の論点は財源である。小学校全体を無償化すると、自治体にとっては年間で相当な額の新たな支出となる。景気や税収の変動があれば、将来にわたり安定して続けられるのかという懸念が残る。また、高所得世帯を含め全員を一律に無償とすることが本当に公平なのか、低所得世帯や多子世帯への重点支援とどう調和させるのかという議論もある。

 さらに、財政負担が増えることで、逆に給食の質や量が下がってしまっては本末転倒である。無償化と同時に、食材費や人件費を適切に確保し、給食の質を維持・向上させる視点が欠かせない。また、国と地方自治体の役割分担をどう整理するかも、制度を長く続けるうえで重要なテーマとなる。

 小学校給食無償化は、「子どもを社会全体で育てる」という理念を具体化する政策である。その意義を踏まえつつ、財源の裏付けや公平性、給食の質の確保などの課題に丁寧に向き合い、将来世代にとって誇れる仕組みとして育てていくことが求められている。

note:個人として、小学校給食の無償化には賛成です。理由は単純で、「どの子も同じように、安心してお昼ごはんを食べられる社会であってほしい」と思うからです。

給食費は、月々の家計の中では「ちょっとした金額」に見えるかもしれませんが、子どもが2人、3人と増えれば、決して軽くはありません。物価や光熱費が上がる中で、「今月もちゃんと払えるだろうか」と、心のどこかでいつも計算しながら暮らしている保護者は少なくないと思います。給食が無償になれば、その不安がひとつ減り、「ごはんだけは心配しなくていい」という安心感を家庭に届けられます。

また、給食費の未納という問題は、数字以上に、人の心を傷つける側面があります。払えない罪悪感、催促する側のしんどさ、子ども自身が何となく感じてしまう後ろめたさ。お金の事情が、子どもの心に影を落とすのは本当に切ないことです。無償化は、この「見えにくい苦しさ」をまるごと取り除く力があります。

もちろん、財源のことを考えると「本当にできるのか」「他の施策とのバランスはどうするのか」という不安もあります。自治体にとっては、毎年続く固定費を増やす決断になりますし、何かを増やせば、どこかで見直しも必要になります。それでも私は、子どもの「食」と「学び」に関わる部分には、できるだけ優先的にお金を使ってほしいと感じています。道路やハコ物と違い、給食は毎日、確実に子どもの体と心を育てる投資だからです。

給食の無償化は、魔法のようにすべての問題を解決してくれるわけではありません。それでも、「お昼ごはんの心配をしなくていい」という一本の太い土台を、社会が子どもと家庭に差し出すことには、大きな意味があると思います。財政の制約や制度設計の難しさを承知しつつも、私は、将来の大人たちに対して「あなたたちのごはんを、社会全体で支えたかったのだ」と胸を張れる選択をしていきたいと感じています。

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この記事を書いた人

市民お一人おひとりの暮らしに寄り添い、その声を受け止め、少子高齢化問題や危機管理に関する解決策を即座に提起すること。そして、市民の皆さまが「長岡京市に住んで良かった」と安心して暮らせる街、さらに皆さまも何らかの形でかかわっていける街づくりをすすめていくためにはどうしたらよいか。
これまで私たちを育て、地域を発展させてきてくださった方々、高齢者世代の方々、若い世代の方々、地域の将来を担う子どもたちが安心して生活できること、皆さまが地域での生きがいや友人を得て、笑顔でいきいきと生活していくためにはどうすればいいのかを、しっかりと考えてまいります。

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