1. 不登校の今の状況
文科省の最新調査では、小中学校の不登校児童生徒は約35万4千人と過去最多です。
内訳は
• 小学校:137,704人
• 中学校:216,266人
小学生では全体の約2〜3%、中学生では約7%前後とも言われ、「どこの学校にもいる、特別ではない状態」になっています。

近年、小・中学校で不登校となる子どもが増え続けている。かつては「特別な子」「一部の家庭の問題」と見なされがちだった不登校は、今やどこの学校でも起こりうる、ごく身近な出来事となっている。
1.不登校をどう捉えるか
不登校は、決して「怠け」や「親の甘やかし」だけで説明できるものではない。学校生活の不安、友だち付き合いの難しさ、発達特性や感覚の過敏さ、先生との相性、家庭の事情、コロナ禍以降の社会の変化、SNSの影響など、多くの要因が折り重なって、子どもを「学校に行けない状態」に追い込んでいる。
大切なのは、不登校を「問題のある子」として見るのではなく、子どもからの「SOSのサイン」として受け止めることだと思う。
「学校に行けない」ことそのものを責めるのではなく、どうすればその子が安心して学び、人とつながることができるのかを、一緒に考える視点が必要だ。
2.市民として見える課題
自治体も不登校支援に取り組んでいるが、市民の目線から見ると、いくつかの課題があるように感じる。
第一に、情報の分かりにくさである。
教育支援センター、スクールカウンセラー、相談窓口など、支援の仕組みはあるものの、「どこに相談したらよいのか」「何が利用できるのか」が市民には見えにくい。特に、不登校が出始めた段階の家庭ほど、情報を探す余力がなく、孤立しやすい。
第二に、学校外の学び場とのつながりの弱さである。
フリースクールや民間の居場所、オンラインの学び場など、多様な取り組みが地域には少しずつ広がっている。しかし、それらが自治体の教育施策と十分に結び付いておらず、「知っている人だけが利用できる支援」になってしまっている面もある。
第三に、保護者への支えの不足である。
保護者自身が「我が家だけがダメなのではないか」と自分を責め、相談しづらくなっているケースは少なくない。同じ悩みを持つ保護者同士が安心して話せる場、情報を共有できる場が、まだ足りていないように思う。
3.私たちにできること
では、自治体にすべてを委ねるのではなく、「私たちに」何ができるだろうか。
一つは、不登校への偏見をなくす声を上げることである。
身近な人との会話や地域の集まりの中で、「不登校=悪いこと」という決めつけではなく、「誰にでも起こりうる」「その子なりに頑張っている」という見方を少しずつ広げていくことは、市民にしかできない役割でもある。
二つ目に、子どもと保護者の話を聴くことである。
専門家のように解決策を出す必要はない。ただ、「しんどかったね」「よく話してくれたね」と受け止めてくれる大人の存在は、親子にとって大きな支えになる。地域で顔見知りの大人が増えることは、それ自体が予防的な支援にもなる。
三つ目に、地域の居場所づくりに関わることである。
公民館や図書館、子ども食堂、学習支援の場など、子どもが「学校以外でも自分でいていい場所」を増やす取り組みには、ボランティアや寄付、周知の協力など、市民が関われる入口がたくさんある。小さな関わりの積み重ねが、子どもたちの「逃げ場」や「新しいスタートの場」を支える。
4.自治体への働きかけ
私たちは、行政を批判するだけでなく、「一緒に考え、提案していく姿勢」も大切にしたい。
たとえば、
• 不登校に関する分かりやすいガイド冊子やウェブページの作成
• 相談窓口の一本化や周知の工夫
• フリースクール等との連携強化
• 保護者向け学習会やピアサポートの場の支援
• 当事者や経験者の声を聴く場の設置
などは、市民側からも具体的に提案できる内容である。パブリックコメントや議会への請願・陳情、地域での勉強会などを通じて、自治体と市民が対立するのではなく、「同じ子どもたちを支える仲間」として動いていけたらと思う。
5.おわりに
不登校は、一つの家庭の問題でも、一つの学校だけの問題でもなく、地域全体の課題である。だからこそ、自治体と市民がそれぞれの立場からできることを出し合い、つなぎ合わせていくことが必要だ。「学校に行けない子」ではなく、「どうすればこの地域で、その子らしく生き、学ぶことができるか」を問い続けること。
私たちは、これからもその視点を大切にしながら、できる一歩を考えていきたい
