2025年5月、スポーツ庁と文化庁の有識者会議で、2026年度以降の部活動改革に関する「最終とりまとめ」が決定されました。
ここで注目すべきは、これまで使われてきた「地域移行」という言葉が、「地域展開」へと改められた点です。
2022年に策定されたガイドラインでは、部活動の地域移行は主に「教員の長時間労働是正」や「学校部活動の限界」への対応として語られてきました。そのため、「学校から地域へ移す」「学校は手を離す」といった、分断的な印象を持たれがちだったのも事実です。
しかし今回の最終とりまとめでは、その発想が大きく転換されました。「地域展開」とは、学校・家庭・地域が一体となり、地域全体で子どもたちの活動を支え、広げていくという考え方です。
地域の体育館や文化施設だけでなく、学校の施設や、希望する教員・指導員も含めて“地域資源”と捉え直す。学校は外れる存在ではなく、関わり続ける存在として位置づけられました。
また、「1校1部活」にこだわらず、複数校合同や地域クラブ、文化芸術団体など、多様な選択肢を組み合わせることも想定されています。競技力向上だけを目的とするのではなく、「楽しみたい」「表現したい」「自分のペースで続けたい」といった子ども一人ひとりのニーズに応えることが重視されるようになりました。
この改革は、単なる部活動の運営変更ではありません。
これまで学校に委ねてきた「子どもの放課後」を、地域全体で引き受け直す試みでもあります。
地域にどんな人材がいるのか、学校と地域は信頼関係を築けているのか――その土台が問われています。
「地域展開」とは、部活動を外に出す改革ではなく、子どもの育ちを地域の中で豊かに広げていく改革。
これからの部活動は、静かに、しかし確実に、その姿を変えていきます。
「地域展開」は試されている
今回、「地域移行」から「地域展開」へと言葉が変わったことは、とても大きな意味を持つと感じています。
それは、部活動を単に学校の負担から切り離すのではなく、子どもの育ちを地域全体でどう支えるかという問いに、ようやく正面から向き合い始めたということだからです。
一方で、制度の理念がどれほど立派でも、現場に無理があれば続きません。指導者の確保、費用負担、送迎や安全管理など、保護者や地域に新たな負担が生じる可能性もあります。「地域で支える」という言葉が、結果として「家庭任せ」になってはいけないと強く思います。
だからこそ重要なのは、拙速に完成形を求めないことです。2026年度は“完成の年”ではなく、“対話と調整の年”であるべきでしょう。学校、地域、行政、そして保護者が立場を超えて話し合い、小さな改善を積み重ねていく。そのプロセス自体が、地域の力を育てるのだと思います。
「地域展開」とは、制度改革であると同時に、私たち大人が子どもとどう向き合うかを問う改革です。
その覚悟があるかどうかが、これから試されているのではないでしょうか
