少し難しく感じるかもしれませんが、ひとことで言うと
「困りごとを“分野ごと”に切らず、丸ごと受け止める地域の支援の仕組み」です。
背景にある問題
これまでの福祉は、
- 高齢者は高齢者福祉
- 障害は障害福祉
- 子どもは子ども家庭分野
- 生活困窮は別制度
…と縦割りでした。
でも現実には、
- ひきこもり × 8050問題
- 貧困 × 子育て × メンタル不調
- 高齢の親 × 無職の子 × 地域孤立
といったように、課題は必ず重なっているんですよね。
制度のポイント(3つの柱)
① 相談支援(断らない相談)
「それは担当外です」と言わない
分野を問わず、まず一か所で相談を受け止める。
必要に応じて複数の支援機関につなぎます。
② 参加支援(社会とのつながりづくり)
支援=給付だけではない
- 居場所づくり
- ボランティア
- 就労体験
- 地域活動への参加
など、「社会と再びつながる」支援を行います。
③ 地域づくり支援(支え合う土台)
個人を支える前に、地域を整える
- 見守り
- 住民同士の助け合い
- 福祉と自治会・NPO・民間の連携
支援が必要になる前に支える地域をつくるのが狙いです。
いつから?どこが実施?
- 2021年度(令和3年度)開始
- 実施主体:市町村(任意事業)
- 所管:厚生労働省
すでに多くの自治体で、
- 既存事業を“束ねる形”
- 新たに相談窓口を設ける形
で導入が進んでいます。
重要な視点(現場・政策目線)
- 「財政に余裕があるからやる」事業ではない
- 課題が深刻化する前に手を打つ“予防型”政策
- 将来的には医療費・生活保護費の抑制にもつながる
つまり、
福祉の充実度は、その地域の成熟度
を測る制度とも言えます。
私たちが心がけたいこと
重層的支援体制は、行政だけで完成するものではありません。
市民一人ひとりの関わり方があって、はじめて機能する仕組みだと思います。
まず大切なのは、「困っている人を特別な存在にしない」ことです。
誰でも、病気や失業、家族関係の変化をきっかけに、支援が必要な立場になる可能性があります。「自己責任」で片づけず、身近な出来事として受け止める視点が、地域の空気を変えます。
次に、小さな気づきを抱え込まないこと。
近所で見かけなくなった人、元気がなさそうな知人、何となく気になる変化――市民だからこそ気づけるサインがあります。自分一人で何とかしようとせず、「相談先につなぐ」「声をかける」ことも立派な支援です。
そして、支援する側・される側を固定しないこと。
今日は支える側でも、明日は支えられる側になるかもしれません。役割を入れ替えながら関われる地域は、無理がなく、長く続きます。
重層的支援体制とは、専門職にすべてを委ねる仕組みではなく、市民が安心して関われる余白を行政が整える制度だと私は考えています。
「できることを、できる範囲で」。その積み重ねが、孤立を防ぎ、地域を強くすることだと信じています。
