「暑いですね」が挨拶代わりだった長い夏がようやく終わり、ほっとしたのも束の間、今度は「寒くなりましたね」という言葉が聞こえてくる。最近、日本には秋がなくなったと言われるようになったが、確かに夏から冬へと一気に季節が進み、秋らしい気候を楽しめる期間がずいぶん短くなったように感じる。

日本には四季があり、それぞれの季節に楽しみがあるが、なかでも秋は、食べ物がおいしく、気候も穏やかで、過ごしやすい季節として親しまれてきた。
松茸の土瓶蒸しに栗ご飯、脂ののった秋刀魚の塩焼き。炊きたての新米に、さつまいもや里芋、柿や梨、ぶどうなど、秋ならではの味覚は実に豊富だ。「食欲の秋」とはよく言ったもので、旬の食材が食卓に並ぶことも季節を感じる楽しみのひとつである。
また、秋の楽しみは食べ物だけではない。金木犀の香りや虫の声、黄金色に実った稲穂、あぜ道に咲く彼岸花、山々を彩る紅葉など、身近な自然の中にも秋を感じるものが数多くある。秋祭りやお月見といった行事も、季節の移り変わりとともに受け継がれてきた日本の文化である。
「秋の日はつるべ落とし」「天高く馬肥ゆる秋」といった言葉があるように、昔から日本人は季節の変化を暮らしの中で感じ取り、楽しんできた。
ところが近年は、10月になっても夏日が続き、紅葉の見頃が遅くなるなど、これまでの季節感とは違う変化が見られる。衣替えの時期にも迷い、秋物の服を着る間もなく冬物を出すことも珍しくなくなった。
こうした気候の変化は、農作物の生育や収穫時期にも影響を及ぼしており、秋が短くなることは、単に過ごしやすい日が減るというだけの問題ではない。四季の変化に合わせて育まれてきた日本の食文化や行事、暮らし方にも関わることである。
もちろん、秋そのものがなくなったわけではないが、以前のようにゆっくりと秋を楽しめなくなっていることは確かだろう。
四季があることを当たり前と思ってきた日本。その当たり前が少しずつ変わり始めていることを、秋の短さからも感じるこの頃である。