2026年10月から、カスタマーハラスメント対策が事業主に義務付けられます。
「カスタマーハラスメント」と聞くと、店員を怒鳴りつける人、土下座を要求する人、何時間も電話で苦情を言い続ける人――そんな「特別な人」を思い浮かべるかもしれません。
でも、カスタマーハラスメントについて考えるとき、ぜひ知っておいていただきたいことがあります。
カスハラは、決して一部の悪質なクレーマーだけの問題ではありません。
私たちの誰もが、加害者になる可能性があります。
「言うべきことを言っただけ」のつもりでも
たとえば、注文したものと違う商品が届いた。
「交換してもらえませんか」
これは当然の申し出です。
ところが、
「今すぐ家まで持ってこい」
「責任者を出せ」
「誠意を見せろ」
「SNSに全部書くぞ」
と、相手に過度な対応を迫るようになったらどうでしょう。
最初は正当な申し出だったとしても、その伝え方や求める内容によっては、カスタマーハラスメントにつながることがあります。
「要望」と「要求」は違う
ここが、とても大切だと思っています。
要望とは、「こうしてもらえると助かります」と相手に伝えること。
一方で、要求は「こうしなさい」と相手に対応を迫ることです。
もちろん、消費者には正当な権利がありますし、商品やサービスに問題があれば、改善や説明を求めることは必要です。
問題は、「何かを言うこと」ではありません。
何を、どのように、どこまで求めるのか。
そこに一線があります。
「私は客なんだから」
「お金を払っているんだから」
「こちらが迷惑を受けたんだから」
そんな気持ちが強くなると、知らず知らずのうちに、相手に「自分の納得するところまで対応すること」を求めてしまうことがあります。
しかし、相手も一人の働く人です。
こちらに不満を伝える権利があるのと同じように、働く人にも人格があり、尊厳があります。
怒ってはいけない、という話ではありません
納得できないことがあれば、伝えていい。
間違いがあれば、訂正を求めていい。
サービスに問題があれば、改善を求めていい。
ただ、そのときに一度だけ考えてみたいのです。
「私は今、要望を伝えているのか。それとも、自分の思いどおりになるまで相手に要求しているのか」
カスタマーハラスメント対策が始まることを、「困った客を取り締まるためのもの」とだけ捉えてしまうと、本質を見失います。
買い物をする。
病院に行く。
役所に問い合わせる。
飲食店を利用する。
介護サービスを利用する。
私たちは日常生活のさまざまな場面で「お客様」になります。
だからこそ、カスタマーハラスメントは誰か遠くの人の問題ではないのです。
誰もが被害者になり得る。
そして、誰もが加害者にもなり得る。
これまで市議会議員として多くの方々の声に接してきましたが、「声を上げること」はとても大切です。
一方で、その声を受け止める側にも、守られるべき尊厳があります。
2026年10月から始まるカスタマーハラスメント対策を機に、「お客様だから何を言ってもいい」でも、「苦情を言ってはいけない」でもない、新しい関係を考えてみたいと思います。
要望は伝える。
でも、相手を支配しない。
このことを、サービスを提供する側だけではなく、利用する私たち一人ひとりも考える時期に来ているのではないでしょうか。