4月は、出会いの季節です。
職場では異動や配置換えがあり、学校では新学期が始まり、地域でも自治会やPTAなど新しい体制が動き出します。
顔ぶれが変わり、役割が変わり、これまでとは少し違う人間関係が始まる時期でもあります。
こういう時期は、期待や緊張が入り混じります。
「うまくやっていきたい」
「気持ちよく関わりたい」
多くの人がそう思っているはずです。だからこそ、この時期にあらためて考えてみたいのが、
ハラスメントの問題です。
ハラスメントというと、つい職場の深刻な問題、あるいはニュースになるような特別な出来事のように思われがちです。けれど実際には、もっと身近な人間関係の中にあります。職場だけではなく、自治会、PTA、地域の集まり、ボランティア活動、家庭の中など、さまざまな場面で起こりうるものです。
しかも、いつも「悪意のある人」がするとは限りません。
むしろ難しいのは、本人には悪気がない場合が少なくないことです。
冗談のつもり、親しさの表現のつもり、指導のつもり、励ましのつもり。
そんなつもりで発した言葉や態度が、相手には重荷になることがあります。
たとえば、みんなの前で何度もいじるような言い方。
「また失敗したの?」
「ほんま頼りないなあ」
言っている側は場を和ませているつもりでも、言われる側は笑うしかなく、
だんだんつらくなっていくことがあります。
周囲が笑えば笑うほど、「やめてください」と言いにくくなるからです。
あるいは、親切のつもりで踏み込みすぎることもあります。
結婚、子ども、年齢、家庭の事情、働き方などについて、
「心配してるだけ」
「親しいから聞いてるのよ」
と言いながら何度も尋ねる。けれど相手には触れられたくない事情があるかもしれません。
親しさがあることと、どこまで踏み込んでもよいかは別の話です。
また、指導や注意のつもりで、人前で強く叱ることもあります。
仕事でも地域活動でも、教えたり注意したりする場面は必要です。
けれど、みんなの前で人格まで否定するような言い方になれば、それは単なる指導ではすまなくなります。
内容が伝わる以上に、「恥をかかされた」「見下された」という痛みが残るからです。
こうしたことは、どれも一見すると小さなことに見えるかもしれません。
でも、小さなことだからこそ見過ごされやすく、「これくらい普通」「気にしすぎ」「昔はもっと厳しかった」と片づけられてしまいがちです。けれど、受け手にとっては、その一言やその場の空気が、長く心に残ることがあります。
とくに自治会やPTA、地域活動の場では、職場とはまた違う難しさがあります。
そこには、はっきりした上下関係があるとは限らない一方で、「昔からのつながり」「地域の空気」「断りにくさ」があります。顔を合わせる機会が続くからこそ、言い返しにくい。波風を立てたくないからこそ、黙ってしまう。
そういう関係の中で、無自覚な圧力や負担が生まれることがあります。
4月は、新しい関係をつくる時期です。
だからこそ、「何を言ってはいけないか」ということだけでなく、「どうすれば相手が安心して関われるか」を考えることが大切なのではないでしょうか。
冗談のつもりでも、相手が笑っていなければ立ち止まる。
親しさを理由に踏み込みすぎない。
注意が必要なときほど、人前ではなく相手の尊厳が守られる形を選ぶ。
そして、誰かがつらそうにしていたら、「大丈夫?」と一声かけてみる。
ハラスメントの問題は、特別な人の問題ではありません。
私たち一人ひとりの、日常の言葉づかいやふるまいの中に関わっています。
新しい人間関係が始まるこの季節だからこそ、互いに気持ちよく関われる空気をどうつくるか、
少し立ち止まって考えてみたいものです。
新年度のスタートが、ただ忙しいだけの4月ではなく、相手への想像力を持って関係を築いていく4月になれば、職場でも地域でも、もう少し息のしやすい場が増えていくのではないかと思います。